夜勤労働者の寿命が短くなるのは嘘?

夜勤労働を長年続けると寿命が短くなると言われています。

特に、看護師や介護士の世界では夜勤で寿命が10年も縮まるとか噂されているようですが…

医学的に『寿命』に影響を及ぼすと言われているのは、遺伝的・体質的な要因の他に、食生活や運動習慣などの生活習慣だと言われています。

生活習慣が乱れがちな夜勤労働者は確かに寿命が短くなってしまいそうですよね。

でも、これって本当でしょうか?

日本の寿命って年々伸びていってますよね?伸びているどころか世界一の長寿国なんて言われています。(2012年83.10歳)

さらに平成24年度の厚生労働省の調べでは、労働者における深夜業従事者の割合は過去最高の21.8%を記録しており、『夜勤は寿命が短くなる』とは話が合いませんよね?

この記事では『夜勤で寿命が縮むのは本当か?』についてまとめていきたいと思います。

たびたび『フランス』の研究結果が例にあがるが…

夜勤労働者と寿命の関係性を示す最も有名なデータといえば、フランスのヴィスナール教授が政府の依頼で行った研究です。

約2万人の交替勤務者の寿命を調査した結果、一般労働者に比べて10年以上も寿命が短かった、というものです。

『10年短くなる』と言われると、かなり怖いですよね?今すぐ夜勤を辞めなければと思う人が居てもおかしくない数字です。

しかし、この研究の欠点は1972年のデータなのでちょっと古いことです。

当時のフランスの寿命は72.1歳。

ということは、1972年にデータを取られた人はおそらく1900年代前半に生まれた人たちです。

あの、タイタニック号が沈んだころくらいの頃です。

やっと蒸気機関から電気に変わろうかとするくらいに生まれた人たちですよ?

産業革命後、第一次世界大戦真っ只中、恐らくは劣悪な環境のもとで働いていた人たちのデータのはずですから、現代の夜勤労働者と比べるのはどうかな…と思ってしまいます。

ただ、研究の影響はすごかった

しかし、このフランスの夜勤と寿命に関する研究は全世界で大きな波紋を呼びました。

フランスは夜勤労働者の健康を守るために

  • 休憩室
  • 仮眠スペース
  • 温かい食事
  • 昼間の日光を遮るカーテン
  • 防音設備
  • 夜間の国営放送

などを義務化し、劇的な深夜労働環境の改善に乗り出しました。

そして、この取り組みが世界的な労働環境改善に繋がったとする見方もあります。

でも、そんなこと現代では当たり前ですよね?

コンビニやTVは24時間やってるし、スマホでインターネットし放題です。休憩室や仮眠スペースがあることなんて当然です。

健康ブーム、美容ブームでありとあらゆるグッズや情報が溢れている現代で、夜勤をすると寿命が縮まると言えるのでしょうか?

ズバリ、現代の夜勤は『死にはしないが病気になりやすい』

労働環境は昔に比べれば劇的に改善され、医療技術そのものも向上したために日本は長寿大国と言われるまでになりました。

2016年のデータでは日本の平均寿命は男性が80.79歳、女性が87.05歳と男女の開きはあるものの、世界最高水準の長寿命国です。

ところが、残念ながら夜勤は寿命が縮むとは言わないまでも、病気になるリスクは一般労働者に比べて遥かに高いようです。

言い方は悪いですが、『死にはしないが病気になりやすい』ということでしょうか…

これは現代の数々の研究データによって裏付けられていますので、夜勤労働者にとっては見逃せない現実です。

胃腸病になるリスクが2倍

名古屋大学が労働者1万人に対して行った調査によると、夜勤労働者は胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの胃腸病になるリスクが一般労働者に比べて2倍高いことが分かりました。

これは、厚生労働省が平成13年に行った労働環境調査でも同じ傾向のデータがとれていて、『夜勤を始めてから体調の変化を感じた』と言う人が最も多く訴えたのが胃腸病でした。

その原因はズバリ

  • ストレス

です。

夜勤は職場の人間環境が劣悪になりやすかつたり、医療系の場合は人の命を預かる極度の緊張感から、つよいストレスに晒される環境が続きます。

そしてストレスは万病のもとですから、胃腸病の他にもさまざまな疾病に繋がっていくんですね…

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糖尿病は年々増加傾向

夜勤労働者は日本人に多い2型糖尿病になる確率が高いと言われています。

夜勤労働者と一般労働者の発症率を直接比較したデータはありませんが、厚生労働省の調べでは日本の糖尿病患者数と夜勤労働者数は年々増加(厚生労働省調べ)しています。

糖尿病の原因は

  • 不規則な生活
  • 睡眠不足
  • ストレス
  • 運動不足
  • 偏った食生活

と言われていますから、全てが夜勤労働に関係がありますよね。

かつては不治の病とまで言われた糖尿病も現在では治療方法も進歩して死亡率は11%(ハーバード大学)『放置しなければ死なない』とまで言われる病気です。

寿命は縮まないが病気になりやすい。そんな現代の夜勤労働者を象徴するのが糖尿病です。

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乳がんになるリスクが2倍

日本人女性の16人に1人がかかり、その20%が死に至るとされる乳がんも夜勤労働との関係性が強いと言われています。

近年、カナダの研究チームが『夜勤を30年以上続けると乳がんになるリスクが一般労働者の2倍になる』という結果を発表して世間を驚かせています。

研究結果によると、勤続30年が発症のボーダーラインとなっていて、30年未満の場合はリスクが高くないそうです。

夜勤に考えられる乳がんの原因は

  • 睡眠サイクルの乱れ
  • メラトニンの分泌抑制(がんを防ぐホルモン)
  • オストロゲンの分泌促進(がんを誘発するホルモン)

と発表されています。

また、デンマークの看護協会でも夜勤の勤務年数が長くなるほど乳がんリスクが高くなるとの結果が出ています。

ただ、

【キャラ】清楚女性C困り

え?

夜勤を30年も続けるの?

無理無理~汗

と言う人も多いでしょう。

例えば18歳から看護師になったとすると、30年勤務だと48歳ですよね?

と言う看護師さんも多いので、そもそも30年も夜勤を続けられるのかという話もありそうです。

余談ですがデンマークでは乳がんの原因が夜勤だったとして労災が認められた事例もあります。

心筋梗塞・脳梗塞などの血管病

心筋梗塞や脳梗塞は糖尿病や高血圧と関係が深い病気なので夜勤との関連性も疑われてきましたが、データが少ないことから明確な関連性は不明とされてきました。

しかし、ついに2012年にカナダのウェスタンオンタリオ大学のチームが夜勤と心筋梗塞や脳梗塞の関連性を示したのです。

心筋梗塞や脳梗塞は突発的に発症するため、心筋梗塞では死亡率が40%、脳梗塞では15%と高いものの、一方で、予防技術が向上したため発症前に発見されることも多くなってきましたよね。

報告によれば、心筋にエネルギーを供給する役割を果たす冠状動脈の血管病リスクが一般労働者に比べて41%も高くなるという驚きの結果が報告されました。

3人に1人が切迫流産を経験

寿命とはあまり関係ありませんが、看護師さんの切迫流産率は非常に高いです。

日本医労連が2010年に行った健康状態調査では看護職員の妊娠経験女性の3人に1人が切迫流産を経験したとの驚くべき結果が発表されました。

そして、妊娠中期の切迫流産は一般労働者の2倍以上の割合でおこっています。

その原因は

  • 不規則な生活
  • ストレス
  • 冷え
  • 慢性的な疲労

と考えられており、まさに夜勤生活そのものですよね。

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寿命より健康寿命が大切!

正直なところ、夜勤に入ることで寿命がどれだけ縮まってしまうのかは分かりません。

昔に比べれば労働環境が改善されているのは確かで、労働基準法に守られた条件で働いている限りは、5年も10年も寿命が縮まることはないとする専門家もいます。

なので、私たち夜勤労働者にとって大切なことは、寿命を延ばすことを考えるより病気にならない事を考えるのが大切です。

いくら寿命への影響が少なくなったとはいえ、病気になってしまっては元も子もありません。

寿命を延ばすというより、健康寿命を延ばしていきましょう。

質の良い睡眠をとりましょう

夜勤勤務者の最大の敵はストレスです。ストレスは万病のもとで、まずは自律神経を乱します。

自律神経とは生体リズムをコントロールする交感神経と副交感神経のダブルスチームです。

自律神経は私たちの意識では制御できない血圧・脈拍・消化・感情・ホルモンバランスの緩急を上手くコントロールする神経なので、乱れてしまうと様々な疾病のもとになります。

ストレス対策には質の良い睡眠が必要不可欠です。

質の良い睡眠とは?

良い睡眠というのは、『睡眠の深さ』と『睡眠の長さ』のバランスが取れていて、副交感神経が活発に働いている睡眠のことです。

睡眠医学の研究では最適な睡眠時間は7~8時間であるとされていて、『睡眠の深さ』によって心身の休息に繋がります。

人間は寝ている時に回復やリラックスを司る副交感神経が活発に働いて身体の調子を整えると分かっているので、睡眠の質が悪いと心身共に疲弊して疲れが蓄積されてしまいます。

でも、夜勤勤務者にとっては日勤者のように理想的な睡眠をとるのはなかなか難しいです。

まずは自律神経を乱さないような睡眠を心がけてはどうでしょうか?

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食事に気を付けよう

夜勤はどうしても家族との生活リズムが合わないので食事が雑になりがちです。コンビニ弁当やインスタント食品で済ませてしまう人も多いのではないでしょうか?

また、多くの夜勤労働者が悩んでいるのが夜勤明けの強烈な食事です。

ストレスや疲労からくるホルモンの乱れが食欲を増進させているのが分かっていて、肥満から来る血糖値上昇のリスクを高めます。

ドカ食いの後は強烈な眠気が襲ってくるので胃腸炎の原因にもなりますよ。

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日光に当たる・運動する

起きた時や休みの日はできるだけ日光を浴びましょう。

先ほどのカナダの研究では乳がんになるリスクを高めているのは日光に当たっていないからという考察も報告されました。

日光を浴びることで体中から自律神経を整える効果のあるセロトニンの分泌が促進され、身体中に活力をもたらすことが分かっています。

セロトニンには抗ストレス作用もあるので夜勤労働者には強い味方になってくれるはずです。

また、ぜひ力を入れたいのが運動です。

看護師や介護士さんと同じように夜勤がある仕事に消防士や警察官がありますよね?

シフトは3交替で組まれていて不規則な生活になりますが、彼らは普段の身体を鍛えるトレーニングをしているので肥満の比率は他の夜勤労働者に比べて少ないのだそうです。

何十年も夜勤を続けない

先ほどもツイートを紹介しましたが、夜勤なんて30年も続けられないと思っている方も少なくありません。

寿命が縮むほどではなくても長年の夜勤労働が乳がんや血管病のリスクを高めることは数々の研究データによって裏付けられています。

体力的に限界を感じるまで夜勤をする必要はないのかもしれません。

環境は改善されたが変わっていない部分もある

フランスの国を挙げた夜勤労働者の待遇改善は世界的な労働環境の向上に繋がりました。

ところが、それだけでは変わらない部分もあるのは確かです。

夜勤労働者が起こる心身の異常はイライラ⇒意気消沈⇒不眠⇒胃病⇒様々な疾病の流れをとることは今も昔も変わっていません。

現代では寿命が著しく短くなることは考えられないのかもしれませんが、病気にならず健康寿命を延ばすことを日々心がけていきましょう。